NAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、私たちの体内でエネルギーを生み出すために不可欠な補酵素です。細胞のエネルギー代謝、DNA修復、老化防止、神経保護など、健康や若々しさを維持する多くの働きに関与しています。しかし、NAD⁺の体内量は加齢やストレス、不規則な生活習慣などで減少していきます。NAD⁺補充療法は、点滴や注射などでNAD⁺を直接体内に補い、細胞レベルでの健康維持やエイジングケア、疲労回復、認知機能の向上などを目指す先進的な治療法です。
期待できる主な効果
- エネルギー活性化・疲労回復
NAD⁺は細胞のミトコンドリアでエネルギー産生に不可欠なため、慢性的な疲労やエネルギー不足の改善が期待されます。 - 認知機能・記憶力の向上
脳の神経細胞の修復や活性化を促し、物忘れや集中力低下、認知症予防にも役立つとされています。 - アンチエイジング・美容
サーチュイン遺伝子の活性化やDNA修復作用により、肌や髪の若返り、しわ・たるみの改善など美容面でも注目されています。 - 免疫力の強化・炎症抑制
免疫細胞の活性化や炎症の軽減作用が報告されています。 - 睡眠の質向上・気分の安定
睡眠サイクルの調節や気分の向上、うつ症状の軽減にも効果が期待されています。
NAD⁺の摂取方法について
NAD+摂取する主な方法としては、サプリメントと点滴(静注)/注射(筋注)/点鼻薬があります。ただし、サプリメントは効率的にNAD+を増やすことはできません。
当クリニックでは、NAD+注射(筋注)とNR(ニコチンアミドリボシド)/NAD+点鼻薬の治療メニューをご用意しております。
1)NAD⁺筋肉注射
直接投与したNAD⁺が細胞膜透過型製剤で細胞内へ到達し、サーチュイン遺伝子(SIRT1-7)を活性化します。
- サーチュイン活性化によりヒストン脱アセチル化が促進
- ミトコンドリア生合成の誘導(PGC-1α活性化)
- DNA修復酵素PARP-1の活性化
期待できる主な効果
- 筋力維持(IGF-1上昇による筋タンパク合成促進)
- 皮膚のコラーゲン密度増加(線維芽細胞活性化)
- 肝臓の解毒機能向上(CYP450酵素系調節)
2)NAD⁺点鼻薬
嗅覚神経経由で血液脳関門を通過し、15分で脳内濃度が2.3倍上昇します。
- 前頭前野のニューロン代謝亢進(ATP産生量35%増加)
- アストロサイトのグルタチオン産生促進
- 神経炎症マーカー(TNF-α)の42%低下
期待できる主な効果
- ワーキングメモリ容量の改善
- 意思決定速度の加速(前頭前野血流増加)
- 慢性疲労に伴うブレインフォグの解消
3)NR点鼻薬
前駆体療法の特性であるNMN→NR→NAD⁺の変換経路を利用し、NAD⁺合成酵素(NAMPT)活性の高い患者様に適応となります。NAD+点鼻薬と比較して安価なため、NR点鼻薬でも効果を得られる方にはおすすめの治療法です。
- 腸管吸収を経ないため消化管での分解回避
- 肝臓初回通過効果を回避した効率的な利用
※律速酵素による個人差について
NR/NMNからNAD+への変換効率を決定するNAD⁺合成酵素(NAMPT)活性の違いにより、効果に個人差があります。
期待できる主な効果
- ワーキングメモリ容量の改善
- 意思決定速度の加速(前頭前野血流増加)
- 慢性疲労に伴うブレインフォグの解消
NAD⁺補充療法とNMN補充療法の違い
NAD⁺補充療法とNMN補充療法はどちらも「体内のNAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)レベルを増やし、健康やアンチエイジングをサポートする」ことを目的とした先進的な治療法ですが、アプローチや効果発現の仕組みに明確な違いがあります。
- NAD⁺補充療法
NAD⁺そのものを注射やサプリメントで体内に直接補充する治療法です。NAD⁺は細胞のエネルギー代謝やDNA修復、老化抑制に不可欠な補酵素で、加齢やストレスなどで減少します。直接体内に投与することで、変換プロセスを経ずに効率よくNAD⁺レベルを上昇させることができます。 - NMN補充療法
NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)はNAD⁺の前駆体です。NMNを注射やサプリメントで摂取すると、まず細胞外で小さなNR(ニコチンアミドリボシド)という物質に変換されてから細胞内に入り、細胞内でNMNに再合成された後、体内でいくつかの代謝プロセスを経てNAD⁺に変換され、最終的にNAD⁺として作用します。
しかし、これらの代謝には、それぞれのプロセスで必要な補酵素が十分にあることが前提となるため、補酵素が不足する場合には、NADまで合成されない場合もあることに注意が必要です。
このような方におすすめ
* 慢性的な疲労やエネルギー不足を感じる方
* 物忘れや集中力の低下が気になる方
* 記憶力や認知機能を高めたい方
* 肌や髪の老化、しわ・たるみが気になる方
* 免疫力を高めたい方
* 健康的なエイジングケアを目指したい方
* 睡眠の質を改善したい方
注意点と副作用
NAD⁺補充療法は安全性が高いとされていますが、投与中に血管痛や一時的な動悸、吐き気、体調不良などが起こることがあります。また、併用薬剤による注意点や、まれにアレルギー反応が出ることがあるため、ご心配な方は医師にご相談ください。
注意が必要な併用薬剤
・メトホルミン:NAD⁺消費が増加(NAD⁺の20%増量投与を推奨)
・SSRI:セロトニン代謝の変化(早朝投与を推奨)
・スタチン:コエンザイムQ10枯渇(CoQ10サプリメントの併用補充を推奨)
NAD⁺補充療法の禁忌
NAD⁺補充療法は比較的安全性が高いとされていますが、以下の方の安全性は十分に評価されておらず、治療を受けることができません。
- NAD⁺に対するアレルギー既往歴がある方
- 妊娠中・授乳中の方
- 小児(子供)
- 重篤な腎機能障害・透析中の方、てんかんのある方
- がん治療中の方や悪性腫瘍のある方
NAD⁺補充療法は、加齢や生活習慣で減少するNAD⁺を直接補い、エネルギー代謝の活性化、アンチエイジング、認知機能向上、免疫力強化など多方面の健康効果が期待できる先進的な治療法です。健康や若々しさを保ちたい方、慢性的な疲労や老化が気になる方におすすめです。
ご興味のある方は、ぜひ医師にご相談ください。