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健康診断の正常範囲と真の健康とのズレ

以下は、健康診断の基準値とオーソモレキュラー分子栄養学の理想値(Optimal Range)を比較した表です。特に、解釈に差異が生じる項目を中心に記載しています。

 

検査項目 健康診断の基準値 理想値((Optimal Range) 健康診断の異常値 オーソモレキュラーでの解釈
総コレステロール 140-219 mg/dL 200-260 mg/dL 220 mg/dL以上 細胞膜構成に必要、高齢者では230-250 mg/dLが最適。
LDLコレステロール 119 mg/dL以下 100-160 mg/dL 120 mg/dL以上 160 mg/dL以下で酸化リスク低減、LH比1.5以下を重視。
HDLコレステロール 40 mg/dL以上 56 mg/dL以上 39 mg/dL以下 (D判定:34 mg/dL以下) 56 mg/dL以上が理想。60~90 mg/dLで心血管保護作用が最大。極端な高値でなければむしろ良好。
AST(GOT) 30 U/L以下 19-44 U/L 31 U/L以上 35 U/Lまで許容、低値はビタミンB6不足の可能性。
ALT(GPT) 30 U/L以下 16-44 U/L 31 U/L以上 脂肪代謝活性化による生理的上昇を考慮。
γ-GTP 50 U/L以下 男性20-50/女性10-30 U/L 男性65/女性32 U/L以上 非飲酒者で50 U/L以下は許容範囲。
尿酸 2.1 mg/dL以上 7.0 mg/dL以下 4.6-6.9 mg/dL 7.0 mg/dL以上 軽度高値は抗酸化作用を考慮。
TSH 0.5-5.0 μIU/mL 0.7-2.7 μIU/mL 4.0 μIU/mL以上 2.8-3.6 μIU/mLは生理的変動範囲。
フェリチン 男性300/女性150 ng/mL以下 男性100-160/女性80-150 ng/mL 男性400/女性120 ng/mL以上 貯蔵鉄充足を優先しつつ酸化ストレス管理。
25-OHビタミンD 20-50 ng/mL 51-119 ng/mL 50 ng/mL以上 免疫機能維持に50 ng/mL以上を推奨。
AST(GOT) 30 U/L以下 19~39 U/L 31 U/L以上(B判定) 36 U/L以上(C判定) 51 U/L以上(D判定) 19~39 U/Lが最適。 低値(18 U/L以下)はビタミンB6不足や代謝低下の可能性。 40~59 U/Lは軽度上昇だが、筋トレ後や運動習慣者では許容範囲。
ALT(GPT) 30 U/L以下 16~44 U/L 31 U/L以上(B判定) 41 U/L以上(C判定) 51 U/L以上(D判定) 16~44 U/Lが最適。 低値(15 U/L以下)はビタミンB6不足や肝機能低下の可能性。 45~69 U/Lは軽度上昇だが、脂肪代謝活性や運動後は許容範囲。
γ-GTP 50 U/L以下(男女共通) 男性17~29 U/L 女性17~29 U/L 51 U/L以上(B判定) 81 U/L以上(C判定) 101 U/L以上(D判定) 17~29 U/Lが最適。 30~39 U/Lは軽度上昇だが、中等度飲酒や脂質代謝活性の範囲内。 40 U/L以上は要注意だが、非飲酒者で50 U/L以下は許容範囲。
ヘモグロビン(Hb) 男性13.1~16.3 g/dL 女性12.1~14.5 g/dL1 男性13.6~15.9 g/dL 女性13.6~15.9 g/dL 男性12.0 g/dL以下または18.1 g/dL以上 女性11.0 g/dL以下または16.1 g/dL以上 13.6~15.9 g/dLが最適。 高値(16.0~17.9 g/dL)は運動習慣や高地居住で許容範囲。 低値は貧血リスク、12 g/dL未満は要注意。

補足・解説

  • HDLコレステロール 健診では「高すぎ」も異常扱いだが、オーソモレキュラーでは高値(90 mg/dL未満)をむしろ好ましいとする。
  • AST/ALT 健診では上昇のみ指摘されるが、オーソモレキュラー分子栄養学では低値も重要視し、ビタミンB6不足や低栄養を示唆。
  • γ-GTP 健診では50 U/L超で異常だが、分子栄養学的には30~39 U/Lは許容範囲。飲酒や薬剤の影響も考慮。
  • ヘモグロビン (Hb) 健診では高値も異常扱いだが、分子栄養学的には運動・高地など生理的要因を考慮し、症状なければ許容。

このように、健康診断とオーソモレキュラー分子栄養学では「異常」「最適」の捉え方が異なる項目が多く、特にHDLコレステロールやAST/ALT、γ-GTP、Hbなどはその代表例です。

コレステロール値のよくある誤解

細胞膜の構造・機能維持のためにコレステロールは不可欠であり、加齢に伴い高めの血中コレステロール値がむしろ生命予後に有利となる場合があることが、基礎医学と疫学の両面から示されています。

1. 細胞膜構成におけるコレステロールの役割

  • コレステロールは細胞膜の主要構成成分であり、全膜の最大40%を占めます
  • 細胞膜の厚みや柔軟性、選択的な物質輸送、細胞間シグナリングなど多様な機能に不可欠です。
  • コレステロールが不足すると、膜の安定性や機能性が損なわれ、細胞の恒常性維持に悪影響を及ぼします。
“Accounting for up to 40 percent of the membrane, cholesterol is essential for the structure, elasticity and the various functions of cell membranes.”

2. 高齢者における総コレステロール値と予後

  • 高齢者では総コレステロールが高め(230–250 mg/dL前後)である方が、死亡率が低いことが複数の疫学研究で示されています。
  • 85歳以上の高齢者を対象とした大規模コホート研究では、総コレステロールが高い群(6.5 mmol/L≒251 mg/dL以上)は、低い群よりも全死亡率が有意に低く、特にがんや感染症による死亡が少ないことが報告されています。
  • さらに、他の研究でも高齢者においては血清コレステロール値が高い方が長生きする傾向があり、コレステロール低下療法の有効性や必要性に疑問が呈されています。
“In people older than 85 years, high total cholesterol concentrations are associated with longevity owing to lower mortality from cancer and infection.”

参考文献:FAU研究グループによる細胞膜とコレステロールの機能解明PubMed: 85歳以上の高齢者における総コレステロールと死亡リスク高齢者における脂質値と全死亡率の関連(中国コホート研究)

総コレステロールが低値であることによるデメリットは、以下のようにまとめられます。

3. 総コレステロール低値のデメリット

1. 低栄養・慢性疾患との関連

  • 総コレステロールやLDLコレステロールが低い場合、免疫機能の低下、がんのリスク、低栄養、甲状腺機能亢進症、慢性感染症、吸収不良症候群などの病気が背景にあることが多いとされています。
  • 極端なダイエットや偏食がなくても、原発性低LDL-C血症など遺伝的要因が隠れている場合もあります。

2. ホルモン・細胞膜・胆汁酸合成への影響

  • コレステロールは細胞膜、ステロイドホルモン、胆汁酸の原材料であり、低値が続くとこれらの合成が障害される可能性があります。
  • 特にホルモンバランスの乱れや、脂溶性ビタミンの吸収障害につながることも考えられます。

3. 心血管系疾患のリスク

  • 総コレステロールが低い場合、HDLコレステロールも低いことが多く、HDL低値は動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞のリスクを高めるとされています。

補足:総コレステロール低値とうつ病・精神疾患との関係

うつ病や精神疾患と総コレステロール低値との関連性については、以下の知見が得られています。

1. 疫学的エビデンス

  • 抑うつリスクの増加 総コレステロール160 mg/dL未満の男性は、他の群に比べ抑うつ度が有意に高く、特に高齢者で顕著です。
  • 自殺行動との相関 自殺未遂歴のあるうつ病患者は、総コレステロールが平均10-15 mg/dL低いことが報告されています。 (参考:https://president.jp/articles/-/41486?page=3

2. 生物学的メカニズム

  • セロトニン伝達の障害 コレステロールは細胞膜の安定性に不可欠で、低値状態ではセロトニン受容体の機能が低下し、神経伝達が阻害されます。
  • 抗酸化機能の低下 コレステロールの抗酸化作用が減弱し、神経炎症や酸化ストレスが増加します。

3. 性差とリスク

健康診断 vs オーソモレキュラー

指標 健康診断の基準値 Optimal Range リスク領域
総コレステロール 140-219 mg/dL 200-260 mg/dL <160 mg/dL(抑うつリスク↑)
LDL 70-139 mg/dL 100-160 mg/dL <85 mg/dL(自殺リスク↑)
HDL 男性40-70、女性45-75 56 mg/dL以上 <45 mg/dL(女性の抑うつリスク↑)

 

総コレステロール低値はセロトニン機能障害や抗酸化力低下を介し、うつ病や自殺リスクを増加させます。特に高齢男性やHDL低値の女性では注意が必要です。分子栄養学的介入によりコレステロールを最適範囲に保つことが、メンタルヘルスの維持に重要です。

 

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