世界的に標準化されている新型出生前診断(NIPT)は、特に欧米諸国においては、政府が全ての妊婦に対して受検を推奨し、その費用の多くを公的に負担しています。出生前診断に対する考え方は、日本とは大きく異なり、「妊娠を中断させるための検査」ではなく、「妊娠時における重要なリスク情報を把握するための手段」と位置付けられています。
当院では、NIPTの実施に際し、「女性の自由な選択権」を尊重する国際的な視点を踏まえ、事前カウンセリングから検査後のフォローアップまで、妊婦の方が孤立しない体制を整えています。特に、陽性判定が出た場合においても、中絶を選択する場合、しない場合のいずれにおいても、安心してご相談いただけるよう、NPO法人「親子の未来を支える会」と連携し、心理的・社会的支援体制を構築しております。
周産期に行われる検査のうち、妊婦健診では母体および胎児の健康状態を確認する目的がありますが、胎児が染色体異常を有しているかを出生前に判定する検査としては、羊水検査や絨毛検査が存在します。しかし、これらは流産のリスクを伴います。
その点、NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)は、母体からの採血のみで胎児の染色体異常の可能性を評価できる、安全性の高い検査として注目されています。
従来は、出生前検査に関する情報を妊婦に積極的に提供する必要はないとの考え方もありましたが、現在は妊娠・出産に関する包括的支援の一環として、妊婦およびそのパートナーが正確な情報をもとに意思決定できるよう、妊娠初期段階において誘導的にならない形で、当院より適切な情報提供を行っております。
NIPTは簡便であるがゆえに、妊婦が検査の意義を十分に理解せずに受検するケースや、結果の意味を誤解するリスクも指摘されています。こうした課題に対応するため、当院では、小児科および遺伝専門医によるバックアップ体制のもと、信頼できる検査機関との連携と、適切な遺伝カウンセリングを通じて、検査結果後も妊婦に寄り添った支援を継続いたします。
私たちは、少子化社会における安心・信頼の医療体制を提供することを目指しています。